最もブラックな職業は医師!?

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最もブラックな職業は医師!?

ブラック企業とは

ブラック企業は「新興産業において若者を大量に採用し、過重労働・違法労働・パワハラによって使いつぶし、次々と離職に追い込む成長大企業」と定義されています。

ただし一般的にはもう少し広い意味合いで使われていて、サービス残業など含めた長時間労働やそれに見合わない給与やパワハラなどが日常的に行われているような企業に対して使われています。

これには明確なラインはなく、「人権」に対してしっかり配慮がなされているかどうかが大きな焦点のように思います。

給与が非常に高くても休みなく残業も長時間でプライベートな時間は皆無のような環境はブラックと言われがちです。

逆に給与が低くても毎日定時に帰れて有給休暇も含めてしっかりと休みをとれるような環境はブラックと言われにくいように思います。

もちろん給与が低く休みもないようなところも多々あるのでしょうが、傾向としてはこのような傾向があるように思います。

これは時代による価値観の変化が大きく関わっているのではないでしょうか。

高度経済成長期などはたくさん働いてたくさん稼ぐことが正しく目標のような風潮だったようですが、現代は自分の時間や家族との時間などへの優先順位が昔に比べて確実に上がっています。 そのような価値観の変化もブラック企業という言葉が周知されるようになってきた要因の一つではないでしょうか。

残業時間

残業は法定時間外労働と言います。法定労働時間とは1日8時間、1週間で40時間の労働のことで、これを超えて働くことを法定時間外労働、つまり残業と言います。

残業は36協定というものに法的上限が定められており、基本的には1か月の上限は45時間、1年の上限は360時間となっています。

特別条項というものを利用した場合は例外的に年に6回(12か月のうち6か月)は月100時間、年に720時間まで残業が認められます。

それに対して医師の残業時間の上限ですが、厚生労働省の出した案では一般的な勤務医の残業時間の上限は「月に100時間、年に960時間」、さらには地域医療を担う特定病院に医師や技術の向上の必要な研修医に関しては「年に1860時間」となっています。

これは過労死ラインと言われる月80時間の約2倍に相当します。

厚生労働省が1860時間の根拠として示したのが医師の約1割の残業時間が1900時間を超えているという実態です。

特に地域医療においては医師や看護師などの医療従事者の長時間労働を前提に医療が成り立っているという状態なのです。厳しい規制をしてしまうと地域医療が立ち行かなくなってしまうのです。

つまりは1860時間という残業時間の上限は「現在の医療を成り立たせるために必要な数字」とも言えるのです。

医師は他の職業に比べて収入も高いのは事実です。しかし実際には夜の当直のアルバイトや、残業にもならないような仕事も非常に多く、時間当たりで計算すると世の中一般的に思われているような高給取りとは言い難いかもしれません。

自分の時間や家族との時間もなく、プライベートを犠牲にして地域医療を支えているような医療従事者はたくさんいます。

医療だけではなくトラックの長距離ドライバーなどのようにインフラを支える仕事に近いような人々の生活の上で必要不可欠な職業は非常に過酷な環境であることが多く、そして残念ながらそれが問題として取りざたされることはあまり多くありません。

ブラック企業についての議論などはここ最近増えてきていますが、このような環境である医療などの状況について誰もがもっと知るべきだと思います。 そしてそもそもなぜそのような状態になっているのかをよく考えなくてはならないはずです。

ブラックな環境を作っているのは誰か

ほとんどの人がブラック企業の原因は会社が社員のことを考えずに安く過酷な状況で働かせて会社が利益を得ようとすることだと考えているのではないでしょうか。つまり経営者サイドの責任と考えていると思います。

もちろんそのようなことも原因の一つになっていることもあります。

しかしそれだけではありません。他の原因も存在します。

そもそも会社は赤字では存続できません。ですから無条件に給与をあげることもできませんし、会社の利益によって払える給与も変動します。

利益が少なければ給与もあまり上げられませんし、人も増やすことができません。

結果として安い給与で長時間働かなくてはならなくなります。

これに拍車をかけているのが「価格競争」です。

例えばドラッグストアや牛丼などのファストフードはその典型例です。

価格競争が進み、安くなければ客が買ってくれないためどんどん販売価格を下げることで、一つ当たりの利益は少なくなっていきます。そのためたくさんの数をさばく必要があります。薄利多売というやつです。

その結果仕事量は増え、利益も上がりにくいため仕事量は増えるにも拘らず人を増やせず一人当たりの負担が増えます。そしてそれにも拘らず給与も上がりにくくなります。

結局この価格競争を前提とした過当競争は色々工夫しても最終的には人件費を抑えざるを得なくなります。

この過当競争を誰が引き起こしているのでしょうか。

まぎれもなく消費者自身です。安くないと買わない、そして日本人の傾向として安いにも拘らず質を求めるだけでなく、充実したサービスも求めます。そして時にはクレームも。

つまり多くのことを求めて負担をかけてそこで働いている人を苦しめているのは消費者なのです。ブラック企業の被害者にもなり得る自分自身が逆に加害者にもなっているのです。

そこを認識しない限り根本的な改善はないのではないでしょうか?

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そして医療においてはさらに厳しい状況です。

日本の医療は非常に質が高いにも拘らず安価です。そして日本人ほどすぐに病院に受診する国はありません。そもそもいつでも好きな時に好きな病院に受診することができるのは日本くらいです。そしてすぐに入院したがったりさせたがったりします。

大都市圏では病院の数も多く患者の奪い合いになっていますが、地方都市では病院一つの経営を支えられるほどの人口がいない場所も多々あります。しかし病院は他の職種と違って人口が少ないから利益が出せないから無くすというわけにもいかないのです。

結果として数少ない医師で日中の診察、オペ、入院病棟の管理、夜中の救急対応などをこなさなくてはならなくなり、1週間帰ることもできず泊まり込みということも多々あります。

そして医療の最大の問題は医療費の問題です。医療費は年々増加しており、国の財政として完全に赤字なのです。病院として赤字でも未来の世代に向けて医療費を圧縮していかなくてはならないのです。つまり流行る病院を作って利益を出していくことが医療においては正しいというわけではないのです。

自分自身の健康管理を怠り、病院に依存してすぐ受診して医師をブラックな労働環境に追い込み、さらには医療費を垂れ流して莫大な赤字を出し、未来の世代に借金を背負わせているのは一体誰でしょうか。

制度や経営者側にも責任はありますが、自分たち自身が作り出している環境だということを認識しなくてはならないと思います。

そしてそれは巡り巡って自分自身、そしてさらには何の罪もない未来の世代を苦しめているのです。 誰もが他人事ではなく当事者としてしっかり考える必要があると思います。

この記事のライター

木部雅也