【改善?改悪?】高齢者の医療費負担引き上げ

保険 医療

政府は75歳以上の医療費窓口負担を、2022年度から2割に引き上げる方針を決定しました。

75歳以上というのは、いわゆる「後期高齢者医療制度」ですね。

ついにですね!

だいぶ以前から引き上げは言われていたことですからね。

とりあえずは所得によるライン引きがされるようですが、今後も負担割合の引き上げは段階的に行われていくことが予想されますね。 この負担割合引き上げに対しては、反対意見は多数あります。

高齢者に死ねと言っているのか!!

弱者を見捨てるのか!!

こんな感じの定番の反対です。

このような意見は、そもそも的外れなんですよね。

負担割合引き上げは、個人的には必要でもあり改善とも言えるものだと考えています。

しかしその理由は、一般的に言われている財政を破綻させないためなどではありません。

国の借金が増えたとしても、日本が財政破綻する可能性は0ですからね。

ではどのような理由で改善と言えるのかを説明していきます。

後期高齢者医療制度とは

まずは後期高齢者医療制度がどのような制度なのかを、簡単に抑えておきましょう。

日本は国民全員が公的医療保険に加入するという「国民皆保険制度」を採用しています。

その中で75歳以上の人が加入するのが、「後期高齢者医療制度」になります。

後期高齢者医療制度の負担割合は、原則1割負担です。 (現役並に所得のある人は3割になります。)

この1割を2割に引き上げるということですね。

高齢者の医療費

以下は日本における各年代の1年間に使っている医療費です。

40~64歳 25.5万円
65~74歳 55.7万円
75歳以上 92.1万円

(2020年度)

75歳以上は年間100万円近い金額になっています。

75歳以上の金額もすごいことになっていますが、他の年代も相当高く感じます。

日本人の病院依存体質を表していると言えるかもしれませんね。この75歳以上の医療費をどうやって賄っているのでしょうか。

(※自己負担が10%を下回っているのは、高額療養費制度など上限があるものの影響です。詳しくは0から学ぶ社会保険|医療保険を参照してください。)

80%以上が税金と現役世代に依存しているのがわかりますね。

現在の高齢者は得している

このようなデータを見ると、75歳以上の自己負担額を引き上げるのは仕方ないように思えますね。1割から2割にしたところで、焼け石に水ではありますが・・・・

ここで勘違いしてはいけないのが、

「後期高齢者の負担割合引き上げは、現在の高齢者にのみ厳しい政策ではない」

ということです。

当たり前のことなのですが、現在の労働世代や若者や子供も、いくかは歳をとって75歳以上の高齢者になっていきます。

75歳以上になれば、それらに世代も2割負担になるわけです。少子高齢化は基本的に解消されませんので、1割に戻ることはまず考えられません。

つまり人生全体で見た時には、誰にも同じ負担を課す政策なのです。(実際には未来では75歳以上でも2割ではなく、3割やそれ以上になっている可能性が高いですが・・・・・)

高齢者に死ねと言っているのか!!

弱者を見捨てるのか!!

だからこそこのように高齢者を差別しているかのように反対する意見は、的外れなんですね。

さらに言えば、現在の労働世代の社会保険料はどんどん上がっています。高齢者のためにたくさん負担しているということです。

それに対して現在の高齢者が労働世代だったころは、労働人口が多く高齢者が少なかったため負担額は今よりずっと少なかったのです。

つまり世代間格差で見れば、現在の労働世代はたくさん払っても少ししかもらえない反面、現在の高齢者世代は少ししか払っていないけれどたくさん貰えているわけです。

どう見ても高齢者を差別しているわけではありません。 しかしだからと言って、この格差が現在の高齢者の責任のように言うのも間違いです。

俺たち労働世代が厳しいのは
高齢者のせいだ!!

気持ちはわかりますが、このような主張も的外れなんです。

そもそもこのようになっている原因は少子高齢化であり、少子高齢化は経済的に発展していった場合に行きつく終着点でもあります。つまり世界中いつかは日本と同じように少子高齢化が進んでいくということなのです。

いわば必然なんですね。

ただし世代間で考える場合、現在の労働世代や子供世代のように移行期の世代が最も割に合わない世代であることは間違いないですね。

健康的視点から改善と言える理由

現在の高齢者が得をしている世代なのは間違いないですが、それでも自己負担が引き上げられたら健康への不安を感じるのはわかりますよね。

「病気になってもお金がなくて医療を受けられないかもしれない」

「病院に行きにくくなって、健康でいられないかもしれない」

「医療費にお金を使わなければいけない分、生活が苦しくなるかもしれない」

このように考えてしまう人も少なくないでしょう。

確かに今よりも厳しい環境になってしまう人もいるでしょう。

どんなことでも100%の人にとってプラスであるものは存在しません。

しかしそれでも、多くの人にとっては今より健康を得られるチャンスになると私は考えています。

そんなわけないだろ!!

こんな声が聞こえてきそうですが・・・・

皆さんは北海道の夕張市が2007年に財政破綻したのをご存じですか?

夕張市は財政破綻した結果、夕張市医療の中枢だった夕張市民病院が閉院してしまったのです。

簡単に言えば、夕張市では手術ができる病院は無くなり、救急車も時間をかけて隣の市から呼ぶようになって、専門外来は消え、入院病床もわずかになってしまったのです。

まさに医療崩壊です。

その結果どうなったと思いますか?

病気が増えて亡くなる人は
すごい増えそう

ところが逆のことが起こったのです!!

病死が減って、老衰が増えました。

死因別トップ3である癌、心疾患、肺炎は概ね減少しました。

隣の市から呼ばなくてはならない救急車の出動回数も、約半数になりました。

結果として、「医療機関に対する需要が減り、医療費が減る」という結果になったのです。

詳しくはこちらを参照してください。

夕張市から学ぶべきこと 夕張市の財政が破綻し、基幹病院であった「夕張市立総合病院」が閉院しました。正確には病院が診療所になってしまったのですが、その後夕張市民の意識に変化が起きました。その変化とは・・・

さらには、少し話は変わりますが、生活保護も似ています。

生活保護受給者の医療費負担は0です。そして生活保護受給者の年間医療費は、一人100万円程度になります。

いくら何でも高すぎますよね。

これらのことから考えてみると、医療が身近で便利で安いことは医療に依存させてしまう原因になっていると考えられます。

そしてそれは「自分で自分の健康を守る」というセルフケアの意識から、最も遠いところにあるのです。

誰もが安価で医療を受けられるというのは非常に恵まれています。しかしその恵まれた環境の結果、病院依存に陥り健康を失ってしまっているのです。

つまり全体的に長期的に考えた場合、負担割合の引き上げは「自分で自分の健康を守る」という基本に立ち返るチャンスにもなり得るというわけです。

本来的にはお金のことで意識が変わるよりも、自発的に変われた方が良いですが・・・

経済的視点から改善と言える理由

次に日本全体のマクロ経済的視点で見た場合について説明します。

(ここは経済的知識がないと少し難しいかもしれません。わからなければ飛ばしてください。)

後期高齢者の負担割合引き上げは、基本的には現役世代の負担を軽減するためと言われています。

税金の投入も抑えたいというのもあるでしょう。

「日本は借金まみれで、このままだと財政破綻してしまう」と言われていますよね。

しかし日本が財政破綻する確率は0です。自国通貨建ての日本は財政破綻(デフォルト)しません。

これは単なる事実です。

つまり日本は国債をどんどん発行してお金を作って、それを医療費に充てれば医療費問題は解決するのです。

しかしこの方法を続けると問題が生じてきます。

インフレですね!!

そうですね。

適度なインフレは好ましいのですが、過度なインフレはバブルやハイパーインフレを引き起こしてしまいます。ですからどんどん国債を発行してお金を増やしても、インフレ率がある一定ラインを超えたらお金を減らすことをしなくてはならないのですね。

例えば増税などです。

でも医療において急に使えるお金が減るということは、いきなり医療供給能力が減るということにつながりかねません。それこそ本当に必要な人に医療を届けられなくなる恐れがあります。

医療を急に強制的に縮小させることは、非常に危険なのです。医療というのは、他の業種とは違い、水道・電気などと同じように生きていく上で必要不可欠なインフラです。

絶対に無くなってはいけませんよね。

要するに医療費が膨張し続けると、最悪の場合インフレを抑えられなくなる可能性があるということです。

そうならないように徐々に医療の需要を抑えて、医療費の膨張を抑えなくてはなりません。 そのために負担割合の引き上げは有効だということです。

解決方法は民間医療保険じゃない!!

そして不安を解消するために、民間の医療保険にどんどん加入してしまうのではないでしょうか?

これは大きな間違いです!!!

民間医療保険では解決できません。

民間医療保険について詳しくは以下を参照してください。

【保険総論】民間保険はいらない? ここでは、各々の民間保険の説明ではなく、民間保険全体としての有効性について大まかに説明していきます。各々の説明は、別の記事であらためて書こうと思います。 結論から言ってしまうとほとんどの民間保険は加入しなくていいです。どういう...
【保険各論】民間医療保険はいらない 結論を言ってしまうと、民間医療保険は全ていらないということになります。というよりも民間の保険のほとんどが、入ると損するものばかりです。そもそも保険本来の機能は「少しずつの金額をたくさんの人から集めて、確率は低いけれど大変なことが起こってしまった少数の人に...

そもそも日本の国民皆保険制度は、世界でも類を見ないほど優秀な制度です。負担割合が引き上げられたとしても、それは変わりません。

そして国が借金をして何とか支えている医療保険と同レベルのものを、民間の保険会社が維持できるわけがないのです。

利益を抜きまくってますからね

利益を出すことを目的とする民間保険と、借金をしてでもサービスを維持する公的保険のどちらが優れているのかは明白ですよね。

間違っても民間保険の罠にはまらないようにしてくださいね。

本当の解決方法

しかし今後少子高齢化が進むにつれて、国民皆保険制度も少しずつ厳しいものになっていくのも事実です。そのような状況の変化に対して、私たちがやらなければならないことはシンプルです。

  • ・生活習慣を改善して健康を維持すること
  • ・投資などによる資産形成をして将来に備えること

この二つだけです。

民間医療保険への加入では決してありません。

どちらも継続的な積み上げが重要ですね。「健康」と「お金」は、不動の将来の不安トップ2です。この不安をなくすために、日頃からの積み上げを頑張りましょう。


最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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