インフォームドコンセント利点と問題点

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インフォームドコンセント利点と問題点

インフォームドコンセントとは

インフォームドコンセントは患者が診断の内容や治療の内容・選択しやリスクなどについて、 医療従事者から十分に説明を受け十分理解したうえで自らの自由意思に基づいて、医療従事者と方針において合意することを言います。(拒否することも含まれます)

簡潔に「説明と同意」と言われることがよくあります。

医師などは状況や治療についてしっかり説明して、患者はそれをしっかり理解することで患者自身が治療方法などを選択していきましょう、ということです。

これはとても大切であると同時に多くの問題点も存在します。

そして現状インフォームドコンセントが歪んで解釈され医療現場で使われているように思われます。

インフォームドコンセントの重要性

最近医師主導の医療から患者主導の医療が叫ばれています。

患者はされるがままではなく、しっかりと理解し自分の意思で決定する必要があると少しずつですが広まってきているように思います。

その象徴的な事としてこのインフォームドコンセントやセカンドオピニオンなどの言葉が一般的に知られるようになってきていることがあります。

インフォームドコンセントを実践していくことによるメリットはいくつかあります。

まずは透明性を確保しやすくなることです。よくわからないまま治療などが進むのではなく、医師がしっかりと説明しなくてはならないのでブラックボックスがなくなっていき、医師は悪く言えば適当なことはできなくなっていくと思います。

結果として医療の質の向上や真摯に取り組まない医師の排除などにつながってくることも期待できると思います。

また患者自身が色々な情報を手にすることで自分の身体のことを知ることができ、その結果自分の健康に意識を持つことができるのではないかと思います。

これは個人的には最も期待している効果ですが、治療のことのみに対してばかりではなく予防について意識が高まる効果はもっと根本的な意識改革をしなくては進まないのかもしれません。

そしてインフォームドコンセントの最大の効果はやはり医師主導の医療から患者主導の医療になることと思われているのではないかと思います。

これが最も重要で最大のメリットと考えられていますが、実はここに大きな落とし穴があると思います。患者主導の医療、自分のことは自分で決める、といった言葉は正しくよく聞こえるかもしれませんが、実際には不可能に近く、そしてデメリットが非常に大きく、インフォームドコンセントの本質的な意味合いからずれていると思います。

インフォームドコンセントの問題点①

~知識不足と時間対価~

医師は医学部6年間通い人体や医学について学び卒業後も研修医時代も含め臨床などに携わり経験を積み、知識と経験を積み重ねています。

その知識と経験をもとにして病気や治療方法を診断して決定します。当然ですが患者にはこの知識も経験もありません。ですから医師は患者に説明をするときに端的に、かいつまんで説明をします。知識や経験を持っていない相手に全てを説明することは不可能です。

しかし現在のインフォームドコンセントは歪んでおり、全てのことに対しての理由などの説明まで求める患者も少なくありません。それが患者の権利だと言わんばかりです。

仮に医師が病気になって患者になったとしても自分の専門の分野以外であればわからないことの方が多いのです。それを一般の患者が理解するために全ての説明を医師に求めるのは不可能であり何の意味もありません。医療現場は患者に知識を与えるための教育の場所ではないのです。

知識も経験もない患者が患者主体で自分のことは自分で決めると言って最良の選択をできるわけがありません。患者が自分で決めるということは本来的には無理な話です。

医師は知識と経験から診断し、治療法などを複数提示する。そしてその相対的メリットとデメリットなどの特徴を患者に伝える。患者は自分の中の優先順位を明確にしてそれを基準に選択するというのが可能なレベルだと思います。

例えばAという治療法は時間がかかるが予後がよい可能性が高くコストも高い。

Bという治療法は時間が短く済みコストも安いが予後は良くない可能性が高い。

この二つがあったとして時間もコストもかけても予後がいい治療法を選ぶのであればAになりますし、コストを安く抑えるということを優先的に考えるのであればBになります。

ここまで単純ではないですが、基本的には自分の優先順位を決めていくことくらいまでしか知識も経験もない患者には難しいことがほとんどです。全てを知ったとしても決めることなどできません。

そして医師に多くの説明を求めるということは医師の時間を奪っていることにもなります。他にもたくさんの患者もいる中で医師の時間は有限ですし、一般の人からは考えられないような長時間労働を続けています。 そして説明にはいくら時間を使ってもそこに報酬が発生せず患者の負担金は発生しません。

この報酬が発生しないことも大きな問題だと思います。現在の保険制度の中では説明に対する報酬は存在しませんので時間を使えば使うほど赤字になっていきます。

日本人の特徴として他人の時間を奪うことを何とも思わない人が非常に多いと思います。そこにかかっている人件費などは考えたこともないのではないでしょうか。

そして長々と時間をとる患者ほど事前に勉強してこない傾向にあります。医師と同レベルは不可能ですが、現代は調べる気があればインターネットですぐに色々な情報を得ることができます。知識としてだけであれば相当なものを得られます。

それもせずに医師の時間を対価も払わずに奪うのは害と言っても過言ではありません。

個人的見解としては保険診療の範囲内では例えば15分とかの説明は受けられるがその後は時間に対して費用がかかるくらいが最低ラインではないかと思います。

そのようにラインを引かなければ何も調べない人にばかり時間がかかるという不公平にも繋がってしまいます。

インフォームドコンセントの問題点②

~医療者の迎合~

インフォームドコンセントが歪んでいるのは患者の問題だけではありません。医師サイドにも問題があります。

医師は自分の専門的な知識と経験によって診断します。それこそが医師の医師たる存在意義のはずです。その診断内容を説明しても同意が得られない場合は治療に入らないというだけの話です。

しかし患者が求める診断に医師が合わせることが増えています。例えば歯科で言えば「絶対に抜かない患者様に寄り添った歯科治療」などのうたい文句の広告などがあります。

患者の要望が抜きたくないだとしても、医師としての診断が抜かなくてはならないものであれば抜いて治療しなくてはなりません。

患者の要望は無理難題なことは多々あります。それは知識と経験がない以上ある程度仕方のないことでもあります。

しかしその患者の要望に医師から合わせにいくことは許されるべきことではありません。

患者獲得のために医師としての診断を捨て、患者の要望に合わせて治療することはもはや医療者として存在する資格はありません。

患者のために医療を行うことは間違いないのですが、それは患者に迎合することではありません。

この迎合が当たり前のように行われていて患者の奪い合いが行われています。 医師として医療者としてのプライドをもって正しい医療を実践する気がないのであれば医療者を辞めてもらいたいと心から思います。

インフォームドコンセントのあるべき姿

そもそも病気に立ち向かい打ち勝ち病気を治すことが治療の目標です。

その治療をするうえで医療者と患者は仲間であり同士であるはずです。

共に協力して病気に立ち向かうのです。チーム医療とは様々な分野の医療従事者が協力して医療を行いますが、患者自身やさらにはその家族もそのチームの一員であると思います。

医師主導でも患者主導でもなく仲間であり、どちらが上とか下とかもなく対等であるべきなのです。

インフォームドコンセントという言葉が叫ばれているという状況自体があるべき姿からかけ離れてしまっているように思えてなりません。

チームとして相談して様々な面から考えて最良の方法を選べばいいのです。医療者も患者を知る努力が必要ですし、患者も自分でも学べることを学ぶことは必要です。チームとして病気だけではなく病人を診るのです。その人の人生を考えるべきだと思います。もちろん状況が悪い場合は治療をせずケアに入るのも一つの選択肢です。それが難しいのは時間とコストの問題です。

医師が一人の患者につきっきりで時間を費やすわけにもいきません。ですからチームとして機能させるべきなのです。医師でないけれど医師の考えを反映できる人を作るなどして患者との相談にあたり、そしてその相談にも費用が発生するようにするなどしたらいいと思います。

そもそも日本の医療は非常に安価ですので、そのようなところも意識を変える必要があると思います。

チーム一丸となって病気に立ち向かう。そのために適材適所な役割を果たす。そして使った時間に対しては費用を支払う。

これを徹底するべきだと思います。そしてそもそも予防を徹底し患者の数を減らすことで一人一人に対して時間を割けるようになるのです。

まずは医療者も患者も病気にならないように予防を第一に考え病気を減らし、それでも病気になったときにチーム一丸になって病気に立ち向かうのです。

今の流行っているインフォームドコンセントはただの小手先の手段のようになってしまっています。

まずは基本に立ち返り本質を見つめ直すべきだと思います。

この記事のライター

木部雅也