マイナンバー制度が医療に与える影響

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マイナンバー制度が医療に与える影響

政府は、2024年秋には健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに一本化する予定であることを表明しました。

事実上マイナンバーカードを義務化するということで、「取得は任意だったはず」「強制するようなやり方はおかしい」などの反対の声も上がっています。

また、個人情報の問題や管理社会への抵抗などにおいて反対する人も多くいます。様々な分野が関わってくることですから、賛否両論があるのは当然です。

全てにおいてメリットしかない制度はありませんし、全ての人が賛成する制度もありません。見る角度によって、見え方は変わってきます。

では医療分野においてマイナンバー制度はどうかと言えば、患者サイドから見た場合には基本的にはメリットが大きいものだと思われます。
医療の質が上がることに繋がると考えられます。

しかし、医療者サイドからは反対の声が出るでしょう。
では、マイナンバー制度が医療にもたらすメリットや、医療者サイドが反対する理由などについて 説明していきます。

マイナンバー制度の医療に対するメリット

マイナンバー制度の医療に対する最大のメリットは

  • 情報の共有

です。

情報の共有は、医療の質や患者の負担軽減にとって、非常に大きなメリットとなります。

レントゲン・CT・MRIなどの画像検査や血液検査をはじめ、ありとあらゆる検査結果がデータとして一元的に管理できます。

そしてそのデータをマイナンバーから引き出すことで、全ての医療機関で共有することが可能になります。

マイナンバー制度の医療に対するメリット

患者からすれば、違う病院にかかったとしても重複して検査を受けなくて済むというわけです。

そうなれば

  • ・患者の費用負担の軽減
  • ・医療費削減
  • ・患者の身体的侵襲の軽減

など、非常に大きなメリットが見込まれます。

また、薬についても同様のことが言えます。処方されている薬は、データにアクセスすれば全てわかりますから、無駄に処方されることを減らすことが可能になります。

薬をデータで管理

これも医療費削減に繋がります。

さらには、マイナンバー制度は医療の質を向上させることにも寄与すると考えられます。

医療において、情報というのは生命線です。診断をする上で、精度の高い情報があるかというのは、非常に大きな意味を持ちます。

マイナンバー制度はデータを経時的に蓄積していきますから

  • ・過去の病気などの既往歴
  • ・過去の治療歴
  • ・過去の検査結果

など、過去からその時までの身体の状況の変化などを全て知ることが出来ます。

これらの過去のデータは、患者の主観が入った不正確なものではなく、客観的なデータなので精度は高いものになります。

過去の精度の高い情報を手に入れられることで、現在の状況の判断に対しても、大きなメリットになることは言うまでもありません。

要するに、マイナンバー制度によって医療分野の情報を一元化して共有するということは、患者にとってメリットが非常に大きいと言えるのです。

医療サイドが反対する理由

マイナンバー制度で情報を共有すれば、医療の質は上がり患者の負担も軽減され、医療費も削減できます。

しかし、どこまで情報の共有が出来るかは、不明です。なぜかと言えば、医師会など医療サイドが反対すると考えられるからです。

反対する理由は、「診療報酬」です。いわゆる医療者サイドの収入です。

保険システムにおいては、検査や処置などを行うことで、診療報酬が発生する仕組みになっています。

診療報酬

マイナンバー制度で検査結果などが共有されてしまえば、各々の医療機関で検査をできなくなり、収入は激減します。

例えば1カ月に1回しか診療報酬が発生しない検査があったとした場合、今は医療機関ごとで月に1回算定出来ますが、マイナンバー制度で情報が共有されれば、最初にその検査をした病院しか算定できなくなります。

そのようになると、割の良い検査のみを行って、利益率の低い処置は他院にまわすような医療機関も多発することも考えられます。

このようなことを考えると、医療サイドがマイナンバーによる情報の共有に反対するのは確実と思われますし、医療機関同士の連携もうまくいかない可能性が高いのです。

資本主義社会である以上、利益が損なわれる制度に対しては、医療であれ上手く機能しなくなってしまうわけです。

医療者を公務員にする

マイナンバー制度は、患者の利益にはなるものの、医療者サイドには不利益になる可能性が高いわけです。患者と医療者の利益が相反してしまうのです。

しかしこのことは、何もマイナンバー制度に限った話ではありません。
マイナンバー制度が導入されていなくても、患者の利益と医療者の利益が相反してしまうのが、医療の実態です。

本質的に言えば、医療というのは病気を無くしたり減らしたりして、患者を無くしたり減らしたりすることが目的のはずです。

しかし、患者が減れば減るほど本質的な医療の目的を達成は出来ますが、医療者の利益は減っていくことになります。

医療の根本的な問題

このことは、医療の根本的な問題でもあります。

他の業種は、客を満足させるほど利益が上がっていく仕組みですが、医療は逆構造になってしまっているわけです。

ですから、医療の本質に忠実に、医療者としてあるべき姿勢で仕事をすればするほど、お金を稼げなくなっていくのです。

つまり、医療は自由競争に不向きな業種だということです。資本主義に向いていないわけです。

ですから、このジレンマを解消するためには

  • 医療者は全て公務員にする

という方法が考えられます。

医療という分野を資本主義・自由競争の枠組みから外すのです。

公務員にすることでのデメリットもあるでしょうが、トータル的にはメリットの方が大きいと思われます。

とは言え、実現できる可能性は限りなく低いとは思いますが・・・

まとめ

  • ・マイナンバー制度は、医療にメリットが大きい
  • ・患者にはメリットだが、医療者の利益には相反する
  • ・医療者を公務員にすれば解決する

医療者を公務員にしてそれなりに高い給料にし、医療者になるための門戸を狭くすることが、医療を適切に行う上で必要なのではないかと思います。

医者を含め医療者の数は激減するでしょうが、医療が充実しすぎているせいで生活習慣病のようなものに多くの人がなるとも考えられます。

医療崩壊したにもかかわらず病死が減った夕張市の例などを見れば、「いつでも・どこでも・安価で」医療を受けられることは、人々の健康意識を低下させていると思われるのです。

つまり、医療が充実しているからこそ、病気が多いわけです。

医療者の公務員化は、そのようなことからも医療の本質を達成するために、適切な方法だと思う次第です。