【保険各論】民間医療保険はいらない

お金 保険

結論を言ってしまうと、民間医療保険は全ていらないということになります。

というよりも民間の保険のほとんどが、入ると損するものばかりです。

そもそも保険本来の機能は「少しずつの金額をたくさんの人から集めて、確率は低いけれど大変なことが起こってしまった少数の人に大きな金額を支払う」ということです。

(詳しくは「【保険総論】民間保険はいらない?」を参照してください。)

起こる確率が低くないと、機能しない仕組みですね。

がん保険をはじめとする医療保険は、この仕組みになっていません。

今や4人に1人は癌で亡くなるような時代ですから、特に高齢者にとって癌は珍しくて確率の低い病気ではありません。

超高齢化社会になったことなどで、医療というのは保険という仕組みでは対応するのが難しいものになっているのです。

さらに民間保険では、保険会社がガッポリ手数料という利益を持っていきます。

全体で見れば確実に「加入者の保険料負担>受給額」となります。

このようなことを言うと、「私は保険に入って得をした」という人が必ず出てきます。

当たり前ですが、そういう話じゃない(笑)

例えば宝くじを買ったとして、宝くじの還元率は50%以下ですから、全体で見れば半分以上の金額を損します。

確率的には、宝くじは買ったら損なことは確実です。

でも高額当選する人もごく少数ですがいますよね。

その人たちからしたら「買って得した」というわけです。

だからと言って宝くじが得するものとはなりませんよね。

このように加入すると損する民間保険ですが、世の中の人たちはどのくらいの金額を保険に支払っているのでしょうか。

日本における生命保険(死亡保険・医療保険・がん保険など)の加入率と支払金額は以下の通りになります。

生命保険加入率 生命保険支払金額(世帯ごと)
男性 81.1% 年額 38.5万円
女性 82.9% 月額 3.2万円

(2019年時点)

すごい金額ですね。

30年間生命保険に入り続けたら1150万円くらいになります。

ちなみに年利5%で毎月3.2万円ずつ30年間積み立てて運用した場合は、約2660万円になります。

やっぱり民間保険いらないですね(笑)

では、具体的に民間の医療保険がいらない理由も説明していきます。

大きく分けると

と言ったところになると思います。

<公的医療保険が超優秀>

日本は国民全員が公的医療保険に加入している国民皆保険制度です。

ざっくりで言えば会社員の人は健康保険、自営業者の人は国民健康保険に加入します。

この日本の国民皆保険制度は世界一恵まれた制度とも言われるくらい超優秀なのです。

この国民皆保険制度には、強力な制度がいくつも存在します。

誰もが最も馴染みのあるもので言えば、病院で診察を受けて10000円かかっても3割負担の3000円の支払いで済みますよね。

(年齢などによっては負担が0、1割、2割の人もいます。)

また、超強力な高額療養費制度という制度が存在します。

この制度は医療保険の最強のセーフティーネットと言っていいようなものです。

具体的には、月々に自己負担で支払わなければならない金額には上限があるということです。

その上限を超えた金額は戻ってきます。

(事前に手続きをすれば、そもそも超過分は払わなくてもよくなります)

上限額は以下の通りです。

所得区分 1ヶ月の自己負担額上限 *多数利用(4ヶ月目から)
年収約1160万~ 252,600円+
(その月の医療費-842,000円)×1%
141,000円
年収約770万~約1160万円 167,400円+
(その月の医療費-558,000円)×1%
93,000円
年収約370万~約770万円 80,100円+
(その月の医療費-267,000円)×1%
44,400円
~年収約370万 57,600円 44,400円
住民税非課税者 35,400円 24,600円

例えば年収500万円の人が、月に200万円分の医療を受けたとします。

3割負担だとすると、自己負担額は60万円です。

しかし高額療養費制度の上限を超えるので、実際に支払う必要のある金額は

80,100 + (600,000 ― 267,000) × 0.01 = 83,430円

200万円分の医療を受けて、8万円ちょっと払えばいいのです。

もちろん8万円という金額は小さくはないですが、200万円分の医療費がかかる事なんて、そうそうありません。

そして生命保険に月々払っている金額の平均は3万円以上でしたね。

金額的に考えても、世界最強の保険である健康保険(国民健康保険)に加入している日本人が、民間医療保険に入る必要はありませんね

他にも病気やケガで仕事ができないときに補償される「傷病手当金」や、出産のときに支払われる「出産手当金」「出産一時金」などの強力な制度もあります。

(詳しくは「0から学ぶ社会保険→Ⅲ.医療保険」を参照してください。)

<手数料が高すぎる>

当たり前ですが、民間保険は公的制度ではありません。

民間の会社が販売している商品です。

つまり目的は利益です。

利益を目的とすることが悪いわけではありません。

利益を求めることは、資本主義の原理原則ですから。

しかし保険という分野に関しては、利益を目的としない公的保険に比べて、利益を目的とした民間保険が充実した内容になるわけがありません

保険会社のCMは芸能人がたくさん出て、頻繁に流れます。

保険会社の従業員は、高給取りであることが多いです。

保険会社のオフィスビルは一等地にあり、とても立派ですよね。

これらのお金は加入者の支払う保険料から持っていかれているのです。

さらにそこから諸経費や利益などが引かれて、余ったお金が加入者に支払われます。

これらすべてを含めると、保険料から保険会社が持っていく割合は3割とか5割とか言われます。

商品によってはもっと高い割合のものもあるそうです。

それだけ持っていかれたら、基本的に加入した瞬間に損するということになりますね。

<医療技術の進歩とともに保険は陳腐化する>

保険というのは、基本的には契約した時の内容が続きます。

例えば一生涯の保険に30歳の時に加入して、20年経って50歳になったとしても、内容は30歳の加入した時のままなのです。

医療は日々進歩しています。

メスで切って開く手術が主流だった以前に比べて、現在はカテーテルの手術も増えました。負担も少なく、入院日数も短くて済みます。

しかし保険は進歩しません。

カテーテルによる手術がないような時代に契約して、それを継続していたとします。

するといざカテーテルによる手術を受けたときに、保険の対象外になってしまうようなことはよくあるのです。

今後はロボット操作による手術が増えてきます。

現在保険に加入したとしても、将来そのような手術が対象になるのか不明です。

対象外とされる可能性は十分にあります

そしてそれに付け込んで、さらに新しい保険商品に勧誘してくるでしょう。

<過剰に病気を怖がりすぎ>

これは保険会社というよりも、加入者の問題にもなります。

多くの人は癌になったら長期の入院になり、数百万円単位でお金がかかると思っているのではないでしょうか。

それは完全に勘違いです。

そもそも癌になって入院をして手術をして社会復帰をするまでにかかる費用は、高額療養費制度も考えると多くても20~30万円程度のものです。

50万円を超えることなどはほとんどありません。

確かに高額ですが、年間40万円近い保険料を支払っているのと比較すると、そこまで高額でもないですよね。

そして癌で入院が長期間というのも幻想です。

例えば肺がんの平均入院日数はだいたい10日間から2週間くらいです。

大腸がんは少し長くなりますが、それでも平均20日以内です。

しかもこの平均は高齢者も含まれていますので、労働世代の入院日数はもっと短くなります

意外と短いと思いませんか?

保険会社のがん保険のCMなどで不安を煽られすぎて、過剰に怖がってしまっている人が多くいます。

そして間違ってはいけないのは、医療保険に加入していたから病気にかかっても大丈夫ではありません

治る病気は治りますし、治らない病気はどんな保険に入っていても治りません。

医療保険は命を救うものではありません。

先進医療特約というものがあります。

これは公的保険のきかない先進医療に対しての民間保険です。

先進医療と聞くと、最先端の医療のようなイメージがしますよね。

そこが罠なのです。

先進医療とは、効果があるかないかまだわかっていない医療のことです。

手探りの実験段階というような感じですね。

効果が確定すると、公的保険に組み込まれます。

あたかも公的保険では治らない病気を治せるようになる保険のように宣伝していますが、騙されないようにしてください。

<まとめ>

医療保険に加入したからといって、病気にならないわけでも、公的保険で治らない病気が治るようになるわけでもありません。

それをあたかも医療保険に入ることで命を繋げるかのように、CMなどで不安を煽るようなことをするのは、もはや合法的詐欺ですね。

残念ですが、医療は万能ではありません

治らない病気は治りませんし、高齢になればなるほどリスクは上がります。

そして特に高齢者に関しては、病気と闘うことだけが医療ではありません。

できるだけ健康を維持するために日々努力をすること。

そして命の終わりである死について考えを巡らせることも大切です。

保険で得られるのは、偽りの安心です。

人はいつか死にます。

完全なる「安全」などは得られることはありません。

そのあたりについて、保険会社のセールストークにまどわされず、自分の頭で考えてみてもらえればと思います。

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