地産地消に潜むデメリット

社会
地産地消に潜むデメリット

地域で育てられた農作物や海産物などの生産物を、その地域で暮らす人たちで消費することを「地産地消」と言います。

簡単に言えば

  • 地元でとれたものは、地元で食べよう

というようなことです。

一般的には良いこととされていますし、様々なところで地産地消は推奨されていますよね。

確かに、地産地消には多くのメリットがあります。生産者・消費者共に、恩恵を受けられることも多々あります。

しかしその反面、地域によっては地産市長がデメリットにもなり得ると考えられます。ミクロな視点とマクロな視点で見ると、相反してしまう可能性があるのです。

地産地消のメリット

地産地消のメリット

地産地消には、様々なメリットが存在します。

  • ・新鮮なものを手に入れることができる
  • ・輸送費などのコストが抑えられるため、安く手に入れられる
  • ・地域独自の食文化の理解と保全に寄与する
  • ・生産者と消費者の距離が近く、ニーズが把握しやすい
  • ・地域の活性化に役立つ

などなどです。

また、昔から「旬のものを食べる」ということは体に良いとされていますし、その地域の季節のものを食べることは健康にも寄与します。他にも、地元の農家などと繋がりを持つことで、地元の人たちが作物を作ることや食に対して興味を持つようになるかもしれません。

学校などと連携して、子どもたちと農家の人たちとの触れ合いを作ることなどもいい方法ですよね。このように、地産地消は多くのメリットが存在し、地域にとってプラスに働くと考えられます。

食というのは人間が生きていく上の基礎になる部分ですので、そこに対してできるだけ触れ合いやすい環境は、子どもの教育にも地域社会にも非常に好ましい環境と言えるでしょう。

都市部の地産地消は地方を殺す

都市部の地産地消は地方を殺す

地産地消は、基本的にはメリットばかりですが、地域が東京のような大都市部に限って言えば、少し話が変わってきます。

東京のような大都市部でも、先述したような地産地消のメリットが無くなるわけではありません。他の地域同様に多くのメリットが存在します。

しかし、東京などにおける地産地消は、メリットだけでなく大きなデメリットも生じてしまうのです。

それは

  • 消費地としての機能が落ちてしまう

ということです。

東京の人口は、日本の総人口の1割以上の1400万人です。

経済規模に至っては、日本のGDPの約2割は東京におけるGDPです。東京都の経済規模は、国家レベルと言っても過言ではありません。

以下は、2019年の各国のGDPと東京都のGDPです。

東京都 9,881億ドル
韓国 1兆6,467億ドル
インドネシア 1兆12,01億ドル
オランダ 9,071億ドル
サウジアラビア 7,929億ドル
トルコ 7,609億ドル

東京の経済規模の大きさがわかりますね。当然ながら、東京は日本においても巨大な消費地です。

地方からすれば、東京への出荷は経済的に不可欠ですし、地方での生産物をその場所だけで消費して経済が回ることはあり得ません。このような東京一極集中が良いことではないのですが、地方がある意味東京だよりである現状は否定できません。

これを東京だけでなく、大阪・名古屋・仙台・福岡・札幌などの大都市も含めると、日本の消費能力の大半は大都市によって賄われていることになります。

では、そのような大都市において、地産地消が進んでしまえばどうなるのでしょうか。

ほんの一部においてのみであれば、特に問題にはならないでしょうしかし、そのような流れが大部分において進み、大都市圏内での農業がビジネスとして成り立つようになれば、地方は消費者を失いかねません。

もちろん、都市圏の地価は地方とは比べ物になりませんから、現実的にそのような状況にならないかもしれません。それでもここ最近、東京などでも地産地消の動きが活発になっていることは間違いありません。

個々というミクロで見た場合には、東京などでの地産地消はメリットのあることです。しかし日本全体というマクロで見た時には、ミクロの良いことの集まりが、結果としてマクロで悪いことになってしまうこともあり得るのです。

このようなことを経済用語では「合成の誤謬」と言います。 いらぬ心配かもしれませんが、地方創生を掲げる以上は考えておかなくてはならないことではないでしょうか。

必要な既得権益

必要な既得権益

そもそも「新自由主義」などによる既得権益の全否定は、あまりに偏り過ぎている考え方と言えます。全てを市場の自由競争に任せてしまえば、地方は衰退し東京の一極集中は加速します。

第一次産業を支えているのは、間違いなく地方であり大都市圏ではありません。インフラとも言える第一次産業などに対して、国が保護して優遇するのは当然です。

自由競争によって自然淘汰されてはならない分野ですからね。他にも、医療・介護・建設業・電気・水道・ガスなどのインフラやそれに近い業種は、完全な自由競争は向いていません。

必要な既得権益は存在するのです。 既得権益を一方的に否定する人たちが多くいますが、もう少し考えるべきだと思います。

まとめ

まとめ
  • ・地産地消には、様々なメリットがある
  • ・但し、大都市圏での地産地消は地方を殺しかねない
  • ・第一次産業など、インフラに近い業種は自由競争に向いていない

ミクロでは合理的なことが、集まるとマクロでは良くない方向になってしまうことは多々あります。何が最善なのかを判断するのは難しいですが、物事には表と裏があることをしっかり理解する必要があるのではないでしょうか。

既得権益も完全に悪というわけではありません。

もちろん、無くすべき既得権益もあるでしょう。しかし、それがあるからこそバランスが取れて社会が回っている既得権益も存在するのです。

「既得権益=悪」という考え方は、浅はかで偏見に満ちた考え方でしかありません。くだらない常識に流されず、背景も考慮に入れて考える必要があるのです。